
ソーシャルワイヤー株式会社(東証グロース:3929)の2026年3月期 通期決算について、代表取締役社長 矢田峰之よりご説明します。インフルエンサーPRを成長ドライバーとした収益構造の転換、翌期業績予想、そして中期成長戦略までを通してお伝えし、最後に個人投資家の皆様からのご質問にお答えします。
収益構造の転換で利益成長が本格化

2026年3月期は、インフルエンサーPRが牽引し、収益構造の転換による利益成長が本格化した一年となりました。通期の主な実績は次のとおりです。
- 売上高:35億1,300万円(コア事業ベースで前年比 +30%)
- 営業利益:2億2,700万円(前年比 +66%)
- 営業利益率:6.5%(前年から +1.8ポイント改善)
トップラインの成長に加えて利益率も改善しており、比較的良い成果を出すことができました。
通期業績サマリーと売上構成の変化

段階利益をブレイクダウンすると、経常利益・当期純利益ともに大きく成長しました。
| 項目 | 2026年3月期 | 前年比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,513百万円 | +30%(コア事業) |
| 営業利益 | 227百万円 | +66% |
| 経常利益 | 205百万円 | +183% |
| 当期純利益 | 221百万円 | +31% |
通期業績予想に対しても無事に達成し、すべての段階利益で増収増益となりました。
注目すべきは売上構成比の変化です。この年度からインフルエンサーPRが全サービスの中で最も大きなウェイト(通期で 42%)を占めるようになりました。インフルエンサーPR事業単体で見ると前年比 +98%、およそ2倍の規模へと拡大しています。
営業利益の増減要因

営業利益は1年間で約 +90百万円 増加しました。ウォーターフォールで見ると、増益の主因は売上総利益(粗利)の +248百万円 です。
- 粗利の増加:インフルエンサーPR事業のオーガニック成長に加え、下半期からM&Aにより連結した iHack の寄与で、粗利が約2.5億円増加。
- 経費の増加:M&Aした子会社の人員増員や営業権の償却費などが利益の押し下げ要因。ただしそれ以外の経費は抑制し、地代家賃の減少なども寄与。
インフルエンサーPRの成長と、子会社の連結効果およびその関連費用との差し引きで、約9,000万円の営業増益となりました。
四半期トレンド:高成長領域が牽引

四半期ベースでも売上・利益ともに成長が継続しています。インフルエンサー事業の進捗が第2四半期あたりから本格化し、第3四半期には四半期売上高が10億円台に乗りました。第4四半期は若干の反落も想定されましたが、おおむね横ばいで着地しています。
サービス別の売上構成比で見ると、インフルエンサーPRのウェイトは30%台から、第4四半期にかけて50%超へと拡大しました。他サービスを大きく上回る成長スピードで、全体に対するプレゼンスを高めています。
通期業績予想に対する進捗

期初に公表した通期業績予想に対し、売上高および各段階利益はすべて計画を達成しました。期の途中で業績予想を上方修正しましたが、その修正後の計画に対しても無事に達成できています。
財務サマリー:健全性を維持しつつ増収増益

財務面では、健全性を維持しながら増収増益を実現しました。
- 自己資本比率:51%。M&Aに伴い一部借入を行いましたが、健全性を保っています。
- ネット有利子負債はネットキャッシュがプラスの状態を維持しており、無理のない資金繰りで成長投資を実行しています。
- 投資キャッシュフローは約▲10億円。ソフトウェア投資もありますが、その大半は iHack のM&Aによるものです。
資本効率と安全性の両立を意識しながら投資を進めており、バランスシートにはまだ投資余力があると考えています。
サービス別トレンド:各サービスが役割に応じて成長・安定

主要サービスはそれぞれの役割を果たしながら成長・安定を維持しています。
- インフルエンサーPR(Find Model/iHack):オーガニック成長+M&Aによる成長ドライバー。
- リスクチェック(RISK EYES):高付加価値で安定成長。
- リリース配信(@Press)/クリッピング(Clip Master):売上は横ばいで苦戦中ながら、エントリー顧客基盤・ストック収益基盤として、サービス間で支え合う重要な機能を担っています。
2027年3月期 業績予想:高成長を継続

翌期(2027年3月期)の業績予想は、インフルエンサーPRの拡大による成長加速を見込み、増収増益を計画しています。
| 項目 | 2026年3月期 | 2027年3月期(予想) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,513百万円 | 4,412百万円 | +26% |
| 営業利益 | 227百万円 | 425百万円 | +87% |
| 経常利益 | 205百万円 | 401百万円 | +95% |
| 当期純利益 | 221百万円 | 327百万円 | +47% |
なお繰越欠損金による税負担の軽減を税効果会計で計上していますが、この業績予想にはその効果を大きくは織り込んでいません。
この計画値は、事業のリストラクチャリングを行う前の事業規模にようやく追いついてくる水準であり、これを実現すればV字回復が揺るぎないものになると考えています。
成長ドライバー:インフルエンサーPRの拡大

2027年3月期は、インフルエンサーPRが業績予想全体の約 48%(およそ5割)を占める計画です。この領域を、次の取り組みで拡大していきます。
- ネットワーク拡大:インフルエンサーの拡充による対応力の強化。
- 案件機能・単価上昇:ブランドプロデュース機能の強化。
- クロスセル強化:既存サービス顧客とのクロスセル推進。
- M&Aによる拡大:機会があれば周辺領域のM&Aも積極的に検討。
収益性改善:固定費構造の最適化

成長に加えて収益性の改善を進めます。事業推進というより、利益率を高めるための固定費削減施策です。
- 施策1:本社・グループ拠点の統合移転 … 年換算で約 1.2億円 の削減効果(効果見込み:2026年9月〜)。
- 施策2:AIX推進による組織最適化 … 業務オペレーションのAI化により人員増加を抑制し、年換算で約 0.7億円 の削減効果(効果見込み:2026年7月〜)。
合計で年換算 約1.9億円 の効果を見込み、2027年3月期から着手します。これは単純な人員削減ではなく、成長分野へ人員を再配置するための下支えと位置づけています。
株主還元:株主優待制度を再開

5〜6年前に停止していたクオカード優待に代えて、株主優待制度を内容を変更したうえで再開します。
- 対象:200株(2単元)以上を保有する株主様
- 基準日:毎年3月末日(年1回)
- 保有条件:6ヶ月以上の継続保有
- 優待内容:デジタルギフト等
- 年間予算:1,500万円(2027年3月期)
時価総額がまだ100億円に達していないことから、まずは個人株主の方を優先する内容としてスタートします。
一方で配当は当期見送りとします。バランスシート上の利益剰余金が現状マイナスであり、今期の計画を実現してプラスに転じる段階のため、現時点で配当を実施することは難しい状況です。まずは優待から一歩ずつ還元を再開していきます。
2027年3月期のまとめ

インフルエンサーPRを軸に、持続的な成長と企業価値の向上を目指します。
- 成長実現:売上・利益ともに高い成長を実現。
- 成長投資:4つの取り組みで成長を維持・加速。
- 収益改善:費用構造を最適化し、利益率を構造的に改善。
- 成長持続:インフルエンサーPRを軸に大規模拡大を見込む。
- 株主還元:株主優待制度を再開し、還元方針を見直す。
成長投資と収益構造の最適化を両輪で推進し、中期的な収益拡大を加速します。
中期ターゲットと成長戦略

ちょうど1年前に開示した中期ターゲットとして、3年後(2028年3月期)に売上高50億円・営業利益8億円の水準を目指しています。デジタルPRの中でもSNS・ソーシャル領域を主戦場と定め、ここに集中する戦略です。
1年前の開示時には野心的にも見える成長イメージでしたが、初年度はおおむね計画どおり大きく成長できました。直近1年の成長額は創業来で最も成長した年度に匹敵する水準です。今期予想の44億円を実現し、あと2回積み上げればおよそ50億円を超える計算であり、中期ターゲットはおおむねオンスケジュールで進行していると捉えています。
一方、営業利益は計画が4億円強でまだ8億円には届いていません。構造改革と事業量の拡大によって、この差を埋めていきます。
成長ドライバーの強化戦略

成長ドライバーそのものをどう伸ばすかを戦略的にブレイクダウンしています。
- 現在、着実に拡大している領域=認知・ブランディング支援:情報拡散・アカウント認知・PR効果の最大化を担う領域で、急成長しています。中長期では業界トップを目指します。ただし、顧客から預かった一定のバジェットの範囲内でサービスを提供する性質を持ちます。
- 今後拡張したい領域=購買・CV(コンバージョン)支援:インフルエンサーやSNSを活用し、購買やコミュニケーションを直接クライアントの売上成果に結びつける機能です。ECモールのコンサルティング、ライブコマース、成果報酬型アフィリエイトなどが該当します。成果が出れば売上が大きく伸びる性質で、一人当たりの生産性を高めやすい領域です。
この購買・CV支援機能を自社開発およびM&Aによって内製化し、SNS・インフルエンサーの運用アセットと掛け合わせることで、生産性の高い手札を備えていく方針です。
資本市場対応:ROEとPERの両輪で企業価値を向上

当社はこの4月から、グロース市場の上場維持基準(時価総額40億円)の改善期間に入りました。小手先の対応ではなく、業績を正面から伸ばすこと――すなわち中期ターゲットの実現に他ならないと考えています。
- ROEの追求(実力値の向上):2028年3月期 営業利益8億円の実現、繰越欠損金の活用による純利益の上ぶれ、AI活用による生産性改善と運営コストの抑制、成長事業への注力投資。
- PERの追求(期待値の向上):2028年3月期 売上高50億円に向けた高い成長スピード(+20%以上の水準で持続)、SNS PRなど成長市場への参入、IR・開示強化による情報発信の充実。
この二つの軸で企業価値の向上を目指します。
時価総額戦略:100〜150億円を視野

タックスシナジー(繰越欠損金の活用)とM&Aの活用により、税引後利益7億円水準を目指します。仮に営業利益8億円水準であれば、保守的に見ても税引後利益7億円程度が見込め、PERによりますが理論上は時価総額100〜150億円が視野に入ると考えています。
これはあくまで理論値であり、実利を伴う形で事業を着実に進めていきます。グロース市場の40億円基準のために何かをするというより、中期ターゲットの実現を合理的にご理解いただけるよう進めれば、自ずとこの水準が視野に入ると考えています。
1年間の振り返り

3年間の中期ターゲットの2年目がスタートしました。1年前になかったものとして、利益の着実な成長と利益率の段階的な改善が実現できています。
- 資本市場との対話:これまで年1回程度だった説明会を四半期ごとに開催。投資家の方からの「デジタルPRを手がけるIT企業なら自前で発信を」という声を受け、社内の新規サービス部門が上場企業向けのIR配信サイト「推し株(OSHIKABU LIVE)」を立ち上げ、その第1号として本説明会を配信しています。
- 社員持株会の導入、コーポレートサイトのリニューアル(20周年を機に、デザインだけでなくKPIや価値観の発信など開示内容を抜本的に刷新)。
- 株主還元:優待という部分的な形ながら再開。
着実に一歩ずつ前進した一年であり、2年目もこれに倣い、同等以上の期待値を持てる年にしていきます。
質疑応答

Q. オーガニック成長のみで中期計画の50億円は達成可能か。他に投資戦略はあるか。SNSマーケティングの拡大方針は。
理論上はオーガニック成長のみでも50億円は達成可能と考えています。ただし「50」という数字にこだわらず、急成長しているインフルエンサー・SNS領域に積極的に投資して伸ばしていく方針です。むしろ「オーガニックだけでも可能だが、投資すればもっといける」と捉えています。
SNSマーケティングの拡大は、急成長中のインフルエンサーPRを年率30〜40%で伸ばしつつ、購買・CV支援(ECモールのコンサル、ライブコマース、成果報酬型アフィリエイトなど、いずれもSNS・インフルエンサーを活用)を加えていきます。成果が出れば青天井に伸びる領域で拡大を取りにいきます。
Q. 今期業績予想の前提・達成確度は。
業績予想は精緻に積み上げて策定しており、保守でもハイアップでもない「ニュートラル」な水準です。妥当性の観点では、2026年3月期下半期(M&A効果含む)の売上高が約20億円・営業利益が約1.3〜1.4億円で、単純に2倍すると年間で売上約40億円・営業利益約3億円となります。そこに構造改革等を加味すると、売上44億円・営業利益4億円には一定の合理性があると考えています。
Q. 中期ターゲット(売上50億円・営業利益8億円)に対する手応えは。営業利益の4億円の差はどう埋めるか。
トップラインの50億円は、一定の粗利率を保ったまま到達できる手応えがあります。営業利益については、44億円から50億円へ売上が約6億円増えると粗利が約3〜3.5億円増える計算で、販管費が増えなければその分が営業増益になります。オフィス移転効果や、成長分野への人員アロケーション(AI活用による省人化)により、人をあまり増やさずに伸ばせると考えています。50億円ちょうどでは8億円に少し届かない可能性もありますが、50億円を少し超えて8億円にタッチできればと考えています。給与を下げる文脈ではなく、一人当たりの生産額を高めることで実現を目指します。
Q. インフルエンサーPR事業の競合に対する優位性と、好調の要因(市場環境か季節要因か)は。
優位性は二つあります。一つは Find Model・iHack で、大手顧客のレギュレーションを抱えながら個別固有のディレクションを丁寧に行う品質の高さがリピートにつながっています。もう一つは定額サブスク型のマッチングプラットフォーム FMサークル で、リリース配信など他の顧客基盤をそのまま活用してクロスセルできる強みがあります。小規模から大手まで幅広く対応でき、大手は人による質の高いディレクション、裾野はプラットフォームでテクノロジー化、という使い分けが事業体としての優位性です。
好調の要因には外部環境の後押しも十分あります。広告予算はマスメディアからデジタル、さらにSNSメディアへと移行・拡大しており、各社の宣伝広告費のうち相応の割合がSNS関連になっていくと見ています。その潮流のポーションを取れる立ち位置を目指します。
Q. コストカット(人員整理)は進行しているか。他部門でも実施するのか。
構造改革として、一部業務をAIに置き換えることは時代背景的に避けられず、進行しています。ただし他部門での大掛かりな人員整理は現状それほど想定していません。5人のチームを4人にする程度は人員整理とは呼ばず、当社の規模ではそうした大規模な対象部門はまだ多くありません。人員整理を乱発するのではなく、減らす部門と増やす部門のアロケーションを行う考えです。強制的な部門異動は避け、「これはAIの仕事にする」と社内に説明しながらフェアに進めます。
Q. 株主還元の増加や配当の可能性は。
具体的なお約束は立場上できませんが、株主還元は税引後利益が増えれば増やせるという考え方です。計画どおり税引後利益が増えれば一定程度は増やさざるを得ないと考えています。配当については、利益剰余金が現状マイナスであり、まずはこれをプラスにすることが先決です。どの水準で配当を出すかは、現段階では言及を控えます。
回答できなかったご質問は、後日まとめてコーポレートサイトに掲載されます。引き続きご視聴ありがとうございました。
本記事は2026年5月18日開催のソーシャルワイヤー株式会社(東証グロース:3929)個人投資家向けIRセミナーの内容を、配信動画・スライドをもとに編集・要約したものです。数値・固有名詞は同社開示資料等で確認していますが、正確な内容は同社の決算短信・決算説明資料をご参照ください。投資判断はご自身の責任で行ってください。